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【労働】韓国で採用担当者が労働者を採用する際に留意すべき事項

2025.04.09

1. はじめに 
 
近年、韓国社会全体で「公正採用」への関心が高まっています。こうした流れを受けて、2021年の「男女雇用平等と仕事・家庭の両立支援に関する法律」改正により、求職者は採用過程での性差別的な扱いについても労働委員会に是正を申し立てることが可能となりました（7条および26条）。人事労務の分野において、採用手続の公正性確保や求職者の権益保護の重要性はますます高まっています。本ニュースレターでは、韓国において求人企業（採用担当者）が労働者を採用する際に留意すべきポイントについて解説します。 
 
 
2.「採用手続の公正化に関する法律」に関するポイント 
 
「採用手続の公正化に関する法律」（以下「採用手続法」）は、採用過程の公正性を確保するため、2014年1月21日に制定・施行されました。現在、常時30名以上の労働者を使用する事業または事業場の採用手続に適用されています（3条）。 
 
採用手続法は、採用手続を進める際に必要な最低限の基準や、求人者・求職者などが遵守すべき事項を比較的詳しく定めております。その例として、採用の強要（法令に違反して採用に関する不当な斡旋・圧力・強要を行う行為。同法により禁止の対象となる行為）、虚偽の求人広告（労働契約を締結した後、正当な理由なく求人広告で提示した労働条件を不利に変更する行為）、不当な個人情報要求（職務の遂行に必要のない求職者の身体的条件、出身地、直系尊卑属の学歴・職業などを要求する行為）などが禁じられます。 
 
採用手続法に関して、実務でよく問題となるのは下記のようなケースです。 
 
<div style="background:#eeeeee;border:1px solid #cccccc;padding:30px;">1) 求職者に職務遂行と無関係な情報を要求する場合（採用手続法4条の3違反 
従来の応募書類や履歴書などの書式を十分に見直さなかったことで、身長・体重・視力など、職務に直接関係のない情報を要求してしまうケースがしばしば発生します。そのため、応募書類や履歴書などの内容を職務関連性の観点から見直す必要があります。 
 
2) 採用審査にかかる費用を求職者に負担させる場合（採用手続法9条違反） 
採用が確定する前に、求職者に健康診断を義務付けることが多くあります。しかし、健康診断も採用審査の一環とみなされるため、求職者が自己負担で受診した場合、結果的に審査費用を求職者に転嫁したと評価され、採用手続法を違反する可能性があります。 
 
3) 採用可否の告知義務違反（採用手続法11条6項違反） 
採用対象者が確定した場合、求人者は遅滞なく求職者全員にその結果を告知しなければなりません。したがって、合格者だけに告知し、不合格者に何も知らせないのは告知義務の違反となる可能性があります。 
 
4) 採用書類返却に関する告知義務違反（採用手続法11条6項違反） 
求人者は、採用可否が確定する前に、採用書類の返却などに関する規定を求職者に知らせる義務があります。これらの事項を事前に案内しない場合、募集要項などに「応募書類は一切返却しない」と明記するにとどまる場合にも、法律違反になる可能性があります。</div>
 
 
3. その他の採用過程で生じる課題 
 
(1) 求人者が採用過程で求職者に犯罪・捜査経歴資料などを要求すること 
 
犯罪経歴照会などについては、「刑の失効等に関する法律」（以下「刑失効法」）で規律されています。刑失効法では、原則として犯罪経歴資料や捜査経歴資料の取得を禁止しており（6条3項参照）、例外的に取得が認められる場合については、限定的・列挙的に規定しています（6条1項参照）。 
 
一般の民間企業（私企業）の採用過程において、刑失効法により犯罪経歴資料や捜査経歴資料の取得が認められる規定はありません。そのため、たとえ求職者の同意を得た場合でも、求職者の犯罪経歴資料や捜査経歴資料を取得することはできません。 
 
さらに、裁判所は、求人者が求職者に「自ら犯罪・捜査経歴照会の回答書を発行・取得して提出させる」行為も許されないと判断しています。具体的には、求人者が運転手（ドライバー）を採用する過程で、求職者に「自分で犯罪・捜査経歴照会の回答書を取り寄せて提出するように」指示した事例で、これは前科者の社会復帰を保障する刑失効法の趣旨に反するとして、求人者に有罪判決が下されました（大邱地方法院2019年8月13日宣告2019ノ949判決、大法院2019年10月31日宣告2019ド12638判決）。 
 
参考までに、多くの企業では「海外渡航に支障がない者」という採用条件を掲げており、これにより実刑判決を受けているか、執行猶予期間中であるかなどといった点を間接的に確認しています（旅券法12条1項）。 
 
(2) 求職者に対するリファレンスチェック（身元照会）を行うこと：可能 
 
結論としては、求人者がリファレンスチェック（身元照会）を行うにあたり、求職者から書面による同意を得たうえで進める必要があります。  
 
リファレンスチェックの過程において、「個人情報保護法」を遵守する必要があります。個人情報保護法により、求人者が労働契約を締結するために「必要な範囲」で求職者の個人情報を収集すること自体は、特に問題とされません（15条1項4号）。また、裁判例も、リファレンスチェックで取り扱われる情報がすべて個人情報保護法でいう「個人情報」に該当するわけではないとの立場を示しています（ソウル北部地方法院2019年11月5日宣告2019ナ32826判決）。 
 
ただし、実務者の立場からすれば、リファレンスチェックで収集した情報が「労働契約締結に必要な情報に該当するのか」、「個人情報保護法で保護される個人情報に該当するのか」を見極めるのは容易ではありません。特に、前職の人事担当者から情報を収集する場合、刑事処罰の可能性が生じるおそれがあります。人事担当者は、個人情報保護法が規定する「個人情報取扱者」とみなされる可能性が高いためです。情報主体の同意がないことを知りながら個人情報取扱者から個人情報を提供される場合、個人情報保護法71条1号により、5年以下の懲役または5千万ウォン以下の罰金が科される可能性があります。 
 
以上のリスクを回避するためにも、求人者は事前に求職者から「リファレンスチェックを行うこと、およびそれに伴う個人情報の収集・利用」に関する書面での同意を得ることが望ましいでしょう。書面による同意を取得する際には、情報を収集する目的、具体的な収集項目、保有期間および同意拒否権があることなどを明示する必要があります。 
 
 
4. おわりに 
 
日系企業の韓国法人で採用担当をされている方は、以上のような点に留意して採用手続を進める必要があります。

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