法務法人(有限)地平

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【デジタルイノベーション】仮想資産利用者保護法の施行に向けて

2024.05.28

<div style="text-align: right;">パク・スンデ弁護士</div>
 
仮想資産1市場は、しばらくの低迷期を経て、昨年下半期にビットコインをはじめとする仮想資産価格が大幅に上昇し、2024年1月、米国証券取引委員会（SEC）がビットコインの現物上場投資信託（ETF）を承認したことにより、再び仮想資産市場の熱気が高まっています。 
 
これに続き、2024年7月19日付の仮想資産利用者保護法の施行に向けて、法施行における準備状況を確認し、新たな規制システムの施行が仮想資産市場にどのような変化をもたらすのか、規制の観点から考察してみたいと思います。 
 
 
1. 仮想資産利用者保護法の主な内容と資本市場法との相違点 
 
仮想資産利用者保護法の内容について、重要なポイントを中心に見てみると、仮想資産を「経済的価値を有するものであり、電子的に取引または移転されることができる電子的証票（それに関する一切の権利を含む）」と定義し、仮想資産事業者に対し、預け金の保護（第6条）、仮想資産の保管（第7条）、保険の加入（第8条）、取引記録の作成・保存及び破棄（第9条）など仮想資産利用者保護のための各種義務を課し、仮想資産の取引に関する未公開重要情報の利用、詐欺的不正取引、相場操縦、仮想資産事業者の自己取引などを不公正取引行為として定め、課徴金や刑事処罰の根拠を設けています（第10条及び罰則規定など）。 
 
このような仮想資産利用者保護法の適用範囲には、ゲームの利用を通じて獲得する成果物、電子金融取引法による前払電子支払手段及び電子通貨、韓国銀行が発行する電子通貨（CBDC）、代替不可能な電子的証票（NFT）などは含まれません。 
 
仮想資産利用者保護法における未公開重要情報利用、詐欺的不正取引、不公正取引行為の禁止条項は、資本市場法と非常に類似しているように見えますが、相場操縦や不当利得の目的がなくても相場に不当な影響を及ぼす可能性のある市場秩序を乱す行為については、今回の仮想資産利用者保護法において規制対象に含まれませんでしたが、仮想資産事業者とその特殊関係者が発行した仮想資産の取引禁止については、資本市場法よりさらに強化された形で仮想資産利用者保護法に導入されました。 
 
また、仮想資産事業者の保険または共済への加入義務は、証券市場の規制体制よりも利用者保護の観点からより強化された措置といえます。 
 
 
2. 仮想資産利用者保護法の施行における準備状況 
 
仮想資産利用者保護法の施行に向けて、大統領令である仮想資産利用者保護法施行令、金融委2告示である仮想資産監督規定、仮想資産市場調査業務規定の制定案が立法予告され、制定手続きが進行中です。 
 
また、仮想資産利用者保護法の施行に向けて、金融委は既存の金融革新課などを主管部署に指定し、金督院3は仮想資産監督局と仮想資産調査局など2つの専門担当部署を新設し、仮想資産規制当局の大枠が完成されました。 
 
これにより、既存の金融情報分析院で行われる資金洗浄の疑惑取引の集計・分析、そして捜査依頼のプロセスとは別に、仮想資産市場の不公正取引行為については、仮想資産取引所に摘発された不公正取引の疑惑事例を金監院仮想資産調査局が調査し、その結果に応じて捜査機関に捜査依頼または告発などの措置を講じる方法で司法プロセスが運営されるものと思われます。 
 
検察は、法施行の前からすでにソウル南部地方検察庁の2次長傘下に仮想資産犯罪合同捜査団を新設し、仮想資産をめぐる様々な違法行為に対する取締りを行っています。仮想資産が存在しなかった時代に設けられた一般刑事規定を武器に仮想資産業界の各種違法行為に対応しなければならないという悪条件の下、仮想資産合同捜査団は、金品を媒介としたコインの上場不正を超え、上場維持、MM（Market Making）作業、各種虚偽公表、違法コイン取引所など、仮想資産領域に対する適用範囲を広げています。 
 
2024年7月19日から仮想資産利用者保護法が施行されるとしても、それ以前の仮想資産取引については、仮想資産利用者保護法ではなく、一般的な刑事規定を適用するしかなく、仮想資産合同捜査団の仮想資産捜査事例がしばらくは仮想資産刑事問題の主流を形成することになると思われます。 
 
 
3. 法施行による影響の見通し 
 
仮想資産利用者保護法の施行により、仮想資産市場にどのような変化がもたらされるのか、つまり、法施行が仮想資産市場の活性化に寄与するのか、今の仮想資産のダイナミクスとボラティリティを維持するのか、予想するのは難しいですが、法施行後、次のようないくつかの見通しを予想することができると思われます。 
 
第一に、仮想資産利用者保護法の各種規制を回避するために、仮想資産の韓国内発行ではなく、海外法人を通じた仮想資産の発行が増加する可能性があります。海外法人の設立を通じた仮想資産の発行及び運用など、法の適用を回避するための様々な試みが増える可能性があります。 
 
第二に、証券市場の場合、韓国取引所という統一的なシステムを通じて不公正取引などを監視・摘発していますが、仮想資産の場合、複数の仮想資産取引所が存在し、これらの仮想資産取引所で不公正取引を摘発したとしても、これを効果的かつ実効的に分析するシステムが支えられなければ、法施行の効果は半減するしかないと予想されます。特に、分析主体の令状なしの取引情報要求権など強制調査権限が付与されない限り、不公正取引の摘発機能における活性化は期待しにくいものと思われます。 
 
第三に、証券業界と異なり、統一的な公表システムが存在しない仮想資産業界において、施行当初、詐欺的不正取引、未公開重要情報利用などの適用過程で様々な法的論争が予想されます。つまり、未公開情報の告知性や未告知性の解消時期、不当な計画や技巧の過度の広範性などをめぐる様々な法的攻防が予想されます。 
 
第四に、仮想資産関連規制事件の調査や捜査の遅れも予想されます。現在、韓国通貨ウォンの仮想資産取引所が導入を準備している監視システムが本格稼働する場合、不公正取引の摘発事例は多く増加すると思われますが、これを現在の司法システムが効果的に消化できるのか疑問です。現在も金融情報分析院（FIU）で告発または捜査依頼された仮想資産疑惑取引事件が長期間滞留している状況ですが、専門的な捜査員の増員なしに別のタイプの不公正取引行為事件が既存の捜査システムに追加的に加わる場合、現在の司法システムが果たして過負荷に耐えられるのか懸念される側面があります。 
 
その他、法施行により、仮想資産市場の安定性や投資家保護が強化され、ある程度のダイナミクスやボラティリティは放棄され、参入障壁が高くなることで新規の仮想資産や取引の参入が難しくなり、既存の仮想資産や仮想資産取引所の集中化・大規模化を促進する方向に機能することが予想されます。 
 
 
4. まとめ 
 
仮想資産利用者保護法が市場に対するガード役として仮想資産市場を一段と安全で成熟したステージに導くのか、市場への干渉と規制で投資家の仮想資産への興味を失わせるのか、仮想資産利用者保護法の施行後における仮想資産市場の動きに注目が集まります。 
 
これまでクロス取引を捉えても、詐欺罪に該当する他の事情を見つけられない限り、正当に適用できる方法がなかった規制当局の立場においては、仮想資産市場の番人としての役割を果たす機会を得ただけに、迅速かつ効果的な規制機能を稼働させつつ、過度な規制中心のアプローチで別の市場の歪みが発生しないよう、運用の妙を発揮してくれることが期待されます。 
 
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<div style="text-align: justify;">1  BTC、ETHなどの暗号資産は、韓国では「仮想資産」という名称で通用しています。このような仮想資産は「仮想資産利用者保護法」で定義されている韓国の法律用語なので、以下では暗号資産を全て仮想資産と呼びます。</div>

<div style="line-height: 110%;">2  金融委員会</div>

<div style="line-height: 110%;">3  金融監督院。日本の金融庁に相当する機関です。 </div>

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