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【労働】通常賃金に関する大法院全員合議体判決を踏まえた「成果給」の検討

2025.04.28

1. はじめに 
 
年末に言い渡された通常賃金に関する大法院（日本の最高裁に相当）全員合議体判決（大法院2024年12月19日宣告2020ダ247190全員合議体判決、大法院2024年12月19日宣告2023ダ302838全員合議体判決、以下「大法院全合判決」）は、現場に大きな混乱をもたらしました。直後には、12月分および1月分の賃金や法定手当の算定に関する問い合わせが殺到し、年末・年始にその支給の可否を判断しなければならない成果給（業績給）やその他の金銭が通常賃金に該当するか否かについての問い合わせも多数寄せられました。大法院が通常賃金の判断基準から固定性の要件を除外したことで、一見すると判断基準が簡素化されたように見えますが、大法院全合判決によって生じる新たな問題は依然として残されています。以下では、今回の通常賃金に関する大法院全合判決以降、特に問い合わせの多かった「成果給」に関する争点について検討してみたいと思います。 
 
 
2. 会社が対象者を選定して支給する成果給 
 
多くの企業が「成果給」という名目で労働者に金銭を支給していますが、その内容は企業ごとに異なります。たとえば、会社が中核人材の長期勤続を促すために支給する成果給（LTI）や、新規人材の採用にあたって条件として提示された成果給など、特定の対象者を選定して支給される成果給が、通常賃金に該当するかどうかが問題となりました。 
 
通常賃金に関する大法院全合判決の法理を適用して検討する前に、通常賃金も「賃金」の一種である以上、まず問題となる金品が賃金に該当するか否かを検討する必要があることを強調しておきたいと思います。大法院は、使用者が労働者に支給する金品が賃金に該当するためには、当該金品が労働の対価として支給されるものでなければならないとし、たとえその金品が継続的かつ定期的に支給されていたとしても、それが労働の対価として支給されたと認められない場合には、賃金には該当しないと説明しています（大法院2019年8月22日宣告2016ダ48785全員合議体判決）。 
 
また、どのような金品が労働の対価として支給されたものであるかを判断するにあたっては、当該金品の支払義務の発生が労働の提供と直接的に、または密接に関連していると認められなければなりません（大法院1995年5月12日宣告94ダ55934判決、大法院2011年7月14日宣告2011ダ23149判決等参照）。もっとも、当該金銭の支給要件や支給事由の発生の有無が明確に定まっておらず、経営実績や労使関係の安定といった、労働者個人の業務実績や労働の提供とは直接的な関連がない要素に基づいて支給の可否や対象者が決定される場合、その支給の有無や範囲が流動的であるため、当該金銭は賃金に該当しないとされています（大法院2005年9月9日宣告2004ダ41217判決、大法院2013年4月11日宣告2012ダ48077判決）。 
 
したがって、各成果給の具体的な内容を個別に検討する必要があります。成果給の発生が労働の提供と密接な関係を有せず、当該金銭の支給条件や支給事由等が確定しておらず、その支給の有無や対象者が流動的である場合には、当該金銭の賃金性または所定労働の対価性が否定され、通常賃金に該当するか否かが争点となる可能性があります。大法院は、過去の2013年の判決において、LTI名目で金銭が支給された事例について、これを「従業員個人の業務成果に関係なく、会社が会社レベルで一定の成果を達成した場合において、3年以上勤続した従業員のうち、会社の裁量により支給対象者を選定して支給された給与」と認定し、平均賃金算定の基礎となる賃金には該当しないと判断したことがあります（大法院2013年4月11日宣告2012ダ48077判決）。 
 
 
3. 業務実績に連動する成果給が支給時期によって通常賃金に該当するか否か 
 
大法院全合判決は、「通常賃金とは、所定労働の対価として定期的かつ一律的に支給されることが定められた賃金をいう」と定義し、①所定労働の対価性、②定期性、③一律性という三つの判断基準を提示しました。続いて、大法院全合判決1（大法院2024年12月19日宣告2020ダ247190全員合意体判決の判示内容）では、「成果給」という小見出しの下で次のように判示しています。「労働者の勤務実績に応じて支給される成果給は、単に所定労働を提供したというだけで支給されるものではなく、一定の業務成果の達成や、それに対する評価結果が一定の基準に達した場合にのみ支給されるものであるため、一般的に『所定労働の対価性』を備えているとは認めがたい。したがって、仮に通常賃金の概念的要素として固定性を除外するとしても、上記のような純粋な意味での成果給は依然として通常賃金には該当しない。ただし、勤務実績とは無関係に、最低限の一定額を支給することが定められている場合には、その金額は所定労働の対価に該当する。」。このように、大法院は「純粋な意味での成果給」は通常賃金に含まれないとする趣旨の判断を示しています。 
 
それでは、上記の大法院全合判決に基づき、勤務実績に応じて支給される成果給について、一律に所定労働の対価性が否定されるものとして、単純に通常賃金に該当しないと結論づけることができるのでしょうか。 
 
成果給について上記判決を下した大法院全合判決の原審を見ると、原審で争点となっていた成果給は「機関長成果給」でした。これは、保険会社の地域団長・支店長および育成センター長に対し、月額20万ウォンから30万ウォンを最低保障額として支給していた定額の成果給であり、在職者要件が問題となった事例です。この「機関長成果給」は、大法院全合判決が「成果給」という見出しの下で言及した「労働者の勤務実績に応じて支給される成果給」とは、あまり関係がないように見受けられます。そうすると、上記大法院全合判決の判示内容は、当該事件の具体的な事実関係に基づくものではなく、大法院が「通常賃金の概念の再定義および判断基準」という見出しの下で、「成果給」に関する一般的な判断基準を提示したものと解されます。 
 
今回の大法院全合判決と、旧大法院全員合議体判決（大法院2013年12月18日宣告2012ダ89399全員合議体判決、以下「旧大法院全合判決」）を比較してみると、成果給に関する今回の判示内容は、旧大法院全合判決における「勤務実績に連動する賃金」に関する部分を念頭に置いたものと考えられます。旧大法院全合判決は、「労働者の勤務実績を評価し、これに基づいて支給の有無や支給額が決まる賃金は、一般的に固定性が否定されると見ることができる」と判示し、勤務実績に連動する賃金について固定性を否定し、それが通常賃金に該当しないと判断しました。今回の大法院全合判決では、固定性要件が判断基準から除外されましたが、それにもかかわらず、勤務実績に連動する成果給については所定労働の対価性が否定され、通常賃金に該当しないと整理しようとした趣旨であると推測されます。 
 
しかし、勤務実績に連動する成果給については、その評価方法や支給時期によって、通常賃金に該当するか否かが改めて争点となると考えられます。たとえば、2023年の人事評価等級（S・A・B・C・D）に基づき、2024年に成果給の支給の有無や支給額が決定される場合が該当します。旧全合判決における「勤務実績に連動する賃金」の部分の詳細を見ると、次のように整理されています。①前年度の勤務実績に応じて、当該年度に特定の賃金の支給の有無や支給額が定まる場合、その支給内容は当該年度において確定しているため、当該年度においてその賃金は固定的な賃金に該当し、通常賃金に含まれると判断されました。②しかし、当該賃金が本来は前年度に支給されるべきものであり、それが単に支給時期を遅らせたにすぎないと認められる特別な事情がある場合には、固定性が認められず、通常賃金には該当しないとされました。今回の大法院全合判決では、固定性要件が判断基準から除外された一方で、このような詳細な争点については明示的な判示がなく、勤務実績に連動する賃金であれば一律に所定労働の対価性が否定され、通常賃金性も否定されるのか、それとも前年度の勤務実績に応じて当該年度に支給される成果給については所定労働の対価性が認められ、通常賃金に該当し得るのかについては、解釈上なお不明確な点が残ります。2 
 
同様の争点が問題となった大法院2015年11月27日宣告2012ダ10980の判決を見ると、月基本給の700％に、前年度の人事評価等級によって決定された昇給分を合算し、これを12か月に分割して毎月支給していた業績年俸の事例について、次のように判示されています。「業績年俸は、たとえ前年度の人事評価結果によって昇給分が異なることがあるとしても、一旦、前年度の評価結果を基に昇給分が決定された場合には、月基本給の700％にその昇給分を加えた金額が、当該年の勤務実績とは関係なく、当該年の労働の対価として金額変動なく支給されるものであり、労働者が所定労働を提供するだけで支給が確定されたと見ることができるため、定期的・一律的に支給される固定的な賃金である通常賃金に該当する。」。このような判示からすれば、労働者の前年度の勤務実績に応じて、当該年度に特定の賃金の支給の有無や支給額が定まる場合、当該年度においてそれらが確定していれば、所定労働を提供するだけで支給が確定されるものと見なされ、所定労働の対価性が認められる余地があると考えられます。実際、前年度の成果評価に基づき、当年度に分割して支給される成果給は、個人別に事前に確定された定期賞与と類似しているようにも見受けられます。したがって、今回の大法院全合判決が示されたとしても、勤務実績に連動する成果給については、その支給時期（すなわち「前年度の勤務実績に応じて当該年度に支給されるものか」あるいは「本来前年度に支給すべきものを遅れて支給したにすぎないのか」）によって、通常賃金に該当するか否かが改めて争点となる可能性があります。多くの企業が前年度の勤務評価に基づいて当年度の成果給の支給可否や支給額を決定している実情に照らすと、今後も成果給の具体的な算定基準や支給時期をめぐって法的な争点となる可能性が高く、これに関する制度整備が求められると言えるでしょう。 
 
 
4. おわりに 
 
大法院全合判決は、「労働者の勤務実績に応じて支給される成果給」について、一般的に所定労働の対価性を備えているとは考えにくく、通常賃金から除外されると判示しました。そのため、一見すると、労働者の業務評価に基づいて支給される成果給は、一律に通常賃金から除外されると断定しがちです。しかし、実際の企業における成果給制度の運用を見ると、多様な支給条件が混在しており、大法院が提示したような「純粋な意味での成果給」と評価できる事例は決して多くありません。したがって、結局のところ、当該成果給が通常賃金に該当するか否かという争点に立ち戻らざるを得ないのが現実です。このように、大法院全合判決が示された後も、成果給をめぐる通常賃金に関する紛争は、引き続き発生するものと予想されます。 
 
※本稿は、『月刊労働法律』2025年2月号に掲載された記事を修正・補完したものです。 
 
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<div style="line-height: 110%;">1  大法院2024年12月19日宣告2020ダ247190全員合意体判決の判示内容。</div>

<div style="line-height: 110%;">2  旧大法院全合判決における「勤務実績に連動する賃金」に関する判示内容と、今回の大法院全合判決における「成果給」に関する部分は、段落構成や論理の流れにおいて類似点が見られます。しかし、今回の大法院全合判決では、旧判決に見られたこの部分の判示内容が明示的に取り上げられておらず、旧大法院全合判決における当該判断がそのまま維持されているのか否かについても、現時点では明確ではありません。</div>

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