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【労働】外国企業の韓国内事業(場)における常時労働者数の判断基準に関する大法院判決

2024.12.20

1. はじめに 
 
勤労基準法11条は、「この法律は、常時5人以上の労働者を使用するすべての事業又は事業場に適用する」と規定し（1項）、「常時4人以下の労働者を使用する事業又は事業場については、大統領令で定めるところにより、この法律の一部規定を適用することができる」と規定しています（2項）。このように、「常時使用する労働者の数」により、勤労基準法の適用範囲が異なります。 
 
一方で、本社が外国にある外国企業の国内事業又は事業場が「常時5人以上の労働者を使用する事業又は事業場」に該当するかは、その事業や事業場の形態、規模、実質に基づき判断する必要がありますが、具体的な判断が難しい場合もあります。 
 
これに関連して、最近、韓国の大法院（日本の最高裁に相当）は、「国際的な労働関係において、勤労基準法11条1項で定める『常時5人以上の労働者を使用する事業又は事業場』の判断基準及び常時使用する労働者数の算定方法」につき、具体的な基準を示し注目を集めています。以下では、最近宣告された大法院判決を紹介します（以下、大法院2024年10月25日宣告2023ドゥ46074判決を「対象判決1」、大法院2024年10月25日宣告2023ドゥ37391判決を「対象判決2」、大法院2024年10月25日宣告2023ドゥ57876判決を「対象判決3」といいます。）。 
 
 
2. 常時使用労働者数の算定 - 「国内使用労働者数」を基準に判断（対象判決1、2） 
 
大法院は、「外国企業が国内で事業活動を行い、労働者を雇用する国際的な労働関係においては原則として『国内で使用する労働者の数』を基準に、勤労基準法が全面的に適用される『常時5人以上の労働者を使用する事業又は事業場』に該当するかどうかを判断すべきである」と示しました。その主な根拠は以下の通りです。 
 
<div style="background:#eeeeee;border:1px solid #cccccc;padding:25px;">① 労働関係の各種規律が統一的に適用される「実質的に同一の経済ㆍ社会的活動単位」に限り、一つの事業又は事業場を構成することができる。そのため、勤労基準法11条の事業又は事業場は、韓国内に位置する事業又は事業場を指すと見るのが妥当である。 
 
② 外国企業が外国で使用する労働者に対しては、特別な事情がない限り、外国の労働関係法令が適用される。韓国の勤労基準法が適用されない外国で使用する労働者の数まで合算して、勤労基準法11条1項の「常時5人以上の労働者を使用する事業又は事業場」に該当するかどうかを判断することはできない。</div>
 
これにより、大法院は、米国に本社を置く法人であるAがアジア・太平洋地域の新規プロジェクト受注業務のために国内で労働者1人を使用した対象判決1の事案において、Aが国内で常時使用する労働者数が1人に過ぎない以上、外国で使用する労働者数まで合算すると常時使用する労働者数が5人以上になるとしても、Aは勤労基準法11条1項で定める「常時5人以上の労働者を使用する事業又は事業場」に該当しないと判断しました。 
 
また、大法院は、対象判決2の事案において、ドイツに本社を置く法人Bが韓国内で営業のために設立した韓国法人Cに2人が勤務していたところ、Bが外国で使用する労働者の数まで合算する場合、常時使用する労働者数が5人以上になるとしても、Cは勤労基準法11条1項に定める「常時5人以上の労働者を使用する事業又は事業場」に該当しないと判断しました。 
 
 
3. 「事業又は事業場」の判断基準（対象判決3） 
 
大法院は、「事業又は事業場」の概念について、「勤労基準法の適用単位となる勤労基準法11条1項の『事業又は事業場』とは、経営上一体となって有機的に運営される経済的・社会的な活動単位を意味する」と判示し、その判断基準を原則と例外に区分しました。 
 
具体的には、「法人格が異なる企業組織は、特別な事情がない限り、一つの事業又は事業場を構成することはできないのが原則である。ただし、別個の法人格を有する複数の企業組織の間に、単なる企業間の協力関係や系列会社、親会社、子会社間の一般的な支配従属関係を超えて、実質的に同一の経済的・社会的活動単位と見なせるほどの経営上の一体性及び有機的関連性が認められる特別な事情がある場合には、これらを一つの事業又は事業場と見ることができる」と示しました。 
 
複数の企業組織が一つの事業又は事業場に該当する特別な事情があるか否かを判断するに当たっては、以下のような基準を示しました。 
 
<div style="background:#eeeeee;border:1px solid #cccccc;padding:25px;">①  業務の種類、性質、目的、実施方法及び場所が同一であるか 
② 業務指示と労働者の採用、労働条件の決定、解雇等の人事及び労務管理が企業組織ごとに区分されることなく、同一の事業主体又は経営陣によって統一的に行われているか 
③ 各単位ごとの事業活動の内容が、ひとつの事業目的のために結合され、人的・物的な組織及び財務会計が相互に密接に関連して運営されているかなど。</div>
 
大法院は、上記の法理に基づき、韓国法人Dとドバイに本社を置くE法人（韓国営業所F）が、オーストラリアに本社を置くGを最上位支配企業とする系列会社であるとされた対象判決3の事案において、DとFは経営上の一体性を有し、有機的に運営される一つの事業又は事業場に該当すると判断しました。そして、D（3人）とF（6人）の常時使用する労働者の数を合算すると5人以上であることから、Dで勤務して解雇された労働者に対して、勤労基準法上の解雇制限及び不当解雇救済申立に関する規定が適用されると判断しました。 
 
 
4. おわりに 
 
対象判決の内容は、下記図のようにまとめることができます。 
 
<img alt="" height="530" src="https://www.jipyong.com/uploads/editor/image/2024/12/20241204060951_info_img.png" width="820" /> 
  
勤労基準法上の解雇制限規定や不当解雇等の救済申請、時間外労働による加算賃金、休業手当、年次有給休暇規定などは、労働者の地位に重要な影響を与え、企業の経営にも重大な問題を引き起こす可能性があります。したがって、韓国で事業を展開する日系企業は、対象判決を踏まえて、韓国内における事業または事業場の常時労働者数を明確に把握し、勤労基準法の適用可能性を考慮し、リスクを判断する必要があります。

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