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【公正取引】下請法改正案、国会本会議通過：技術資料の規制強化

2024.04.01

<div style="border: 1px solid rgb(223, 30, 54); padding: 15px; line-height: 100%; text-align: center;">懲罰的損害賠償の限度引上げ（3倍から5倍へ） 
損害額の算定基準を新設</div>

<div style="text-align: justify;">「下請取引の公正化に関する法律」の改正案が2024年2月1日に国会本会議を通過しました。①原事業者（元請負人）が受給事業者（下請負人）の技術資料を流用した場合、受給事業者が被った損害額の5倍まで賠償責任を負うことができます。②技術資料の流用による損害額算定の具体的な基準が導入され、受給事業者が損害額を立証する負担も緩和される見通しです。 
 
 
1. 懲罰的損害賠償額の限度を3倍から5倍に引上げ 
 
現行の下請法における技術資料流用行為による懲罰的損害賠償額の上限は、実際に発生した損害の3倍（treble damage）です。つまり、法令上の損害賠償責任は、受給事業者が実際に被った損害の3倍まで発生する可能性がありますが、実務的には損害額の2倍程度に制限される傾向があります（ソウル高等法院（日本の高等裁判所に当たる）2021年12月23日宣告2020ナ2032402判決等)。これに対し、改正下請法は、原事業者が受給事業者の技術資料を流用して受給事業者に損害が発生した場合、受給事業者が被った損害額の最大5倍まで損害賠償責任を負担することができると規定しました。 
 
<div style="line-height: 10px; text-align: justify;"> 
* ただし、技術資料流用とともに懲罰的損害賠償規定が適用された不当下請代金決定、不当委託取消、不当返品、減額禁止違反、報復措置行為の懲罰的損害賠償額の上限は、損害額の3倍のそのままです。</div>
 
 
2. 受給事業者の損害額算定基準の新設 
 
既存の技術資料の流用に関する損害賠償事件において、受給事業者が技術資料の流用による損害額の立証に失敗し、適切な救済を受けられないという批判が提起されました。そこで、改正下請法では、特許法第128条の規定を参考にして、次のように技術資料の流用行為によって被った損害額の算定基準に関する条項を新設しました。 
 
<table class="MsoTableGrid" style="border-collapse:collapse; border:solid #bbbbbb 1.0pt">
	<tbody>
		<tr>
			<td bgcolor="#f1f1f1" style="border-width: 2pt 1pt 1pt; border-style: solid; border-color: rgb(47, 85, 151) rgb(187, 187, 187) rgb(187, 187, 187); border-image: initial; text-align: center;" width="20%">基本算定基準</td>
			<td style="border-width: 2pt 1pt 1pt; border-style: solid; border-color: rgb(47, 85, 151) rgb(187, 187, 187) rgb(187, 187, 187); border-image: initial; text-align: left;padding: 10px 30px 10px 30px;line-height : 1px;" width="70%">受給事業者の生産規模を超える範囲についても、技術資料の使用に対する合理的な金額を受け取ることができるようにし、より幅広い被害救済が可能</td>
		</tr>
		<tr>
			<td bgcolor="#f1f1f1" style="border-right: 1pt solid rgb(187, 187, 187); border-bottom: 1pt solid rgb(187, 187, 187); border-left: 1pt solid rgb(187, 187, 187); border-image: initial; border-top: none; text-align: center;">対価水準</td>
			<td style="border-bottom:solid #bbbbbb 1.0pt; border-top:none; border-left:none; border-right:solid #bbbbbb 1.0pt; padding: 10px 40px 10px 30px;line-height : 1px; " valign="top">技術資料の使用に対し、「通常の対価」*より一般的に高い水準である「合理的な対価」水準で規定</td>
		</tr>
		<tr>
			<td bgcolor="#f1f1f1" style="border-right: 1pt solid rgb(187, 187, 187); border-bottom: 1pt solid rgb(187, 187, 187); border-left: 1pt solid rgb(187, 187, 187); border-image: initial; border-top: none; text-align: center;">商品の範囲</td>
			<td style="border-bottom:solid #bbbbbb 1.0pt; border-top:none; border-left:none; border-right:solid #bbbbbb 1.0pt; padding: 10px 40px 10px 30px;line-height : 1px;" valign="top">下請法上の業務委託範囲に役務も含まれることを考慮し、目的物の範囲を物品だけでなく、役務まで含む。</td>
		</tr>
		<tr>
			<td bgcolor="#f1f1f1" style="border-right: 1pt solid rgb(187, 187, 187); border-bottom: 1pt solid rgb(187, 187, 187); border-left: 1pt solid rgb(187, 187, 187); border-image: initial; border-top: none; text-align: center;">推定基準</td>
			<td style="border-bottom:solid #bbbbbb 1.0pt; border-top:none; border-left:none; border-right:solid #bbbbbb 1.0pt; padding: 10px 40px 10px 30px;line-height : 1px;" valign="top">技術資料の流用で原事業者または第三者が得た利益額**を受益事業者の損害として推定することができる。</td>
		</tr>
	</tbody>
</table>

<div style="line-height: 10px; text-align: justify;"> 
*   改正前の特許法第128条第3項は、特許侵害者が受けることができる実施料を「通常受けることができる金額」と規定。 
** 判例は、特許法上の「特許侵害行為で侵害者が得た利益」を「製品の総販売額にその純利益率を乗ずるか、その製造販売数量にその製品1個当たりの純利益額を乗ずる等の方法」で算出（韓国の大法院（日本の最高裁判所に当たる）1997年9月12日宣告96ダ43119判決）。</div>
 
 
3. 下請取引の技術資料に関するプロセスの点検が必要 
 
中小企業/受給事業者の技術保護は、汎政府的に推進されており、大企業/原事業者の規制リスクも強化されています。公正取引委員会は、下請法で原事業者の技術資料の提供要求及び流用を強力に規制しており、2023年4月13日、法執行の予測可能性を高めるために「技術資料要求書及び秘密保持契約書作成ガイドライン」を配布したことがあります。今回の下請法改正も、原事業者の技術資料流用を抑制し、受給事業者の被害を速やかに救済するという基調の下で推進されたものです。 
 
強化された規制に合わせ、中小企業/受給事業者との業務プロセスで発生する技術資料取扱のプロセスを、全面的に再点検する必要があると思われます。 
 </div>

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