1. PEF関連課税制度の変更 2008年まで、「間接投資資産運用業法」による私募投資専門会社(以下、PEF)が配当可能利益の90%以上を配当する場合、その金額を所得金額から控除することができました(2008年12月26日改正前法人税法第51条の2第1項第2号。以下「所得控除規定」)。また、配当可能利益を超過し配当決議を行う場合にも、上記法人税法上、所得控除規定の適用受けられました(書面2チーム-60.2007.1.9.)。これによって、PEFが税務上課税標準に相当するすべての金額を配当すると決議する場合、法人税課税標準金額が発生せず、法人税を負担しないことも可能でした。 ところが、2008年12月26日法人税法改正の際、PEFは、上記所得控除規定の適用を受けられる対象会社から除外されました(現行法人税法第51条の2第1項第2号)。その代わりに、PEFは2009年から同業企業課税特例制度の提供を受けられることになりました(租税特例制限法第100条の15第1項第3号)。 このように、2009年以後、PEFに適用される課税制度が相当変更されましたが、以下では、その内容を検討します。 2. 2009年以後の適用されるPEFに対する課税制度 1) 2009年1月1日以前に登録したPEFの場合 2009年1月1日以前に「間接投資資産運用業法」第144条の6によって金融委員会に登録したPEFの場合、2009年1月1日以後、最初に開始する事業年度の開始日から1ヶ月以内に租税特例制限法第100条の17によって同業企業課税特例(以下、同業企業課税特例)の適用を申請しなかった場合、法人税法第51条の2第1項第2号の改正規定にもかかわらず、該当法人の解散登記日が属する事業年度までは従来の規定を適用し、この場合、該当法人は、その解散登記日の属する事業年度まで同業企業課税特例の適用を受けられません(法人税法附則(2008.12.26)第20条第1項)。 つまり、2009年1月1日以前に登録したPEFの場合、2009年1月1日以後、最初に開始する事業年度の開示日から1ヶ月以内に同業企業課税特例の適用を選択したのであるならば、選択した事業年度からは同業企業課税特例の適用が受けられますが、これを選択しなかった場合には、解散時まで同業企業課税特例の適用を受けられません。その代わりに、法人税法の改正に関わらず、既存の法人税法に従って配当可能利益の90%以上を配当する場合、その金額だけ、所得控除の適用を受けられます。 2) 2009年1月1日以後の登録したPEFの場合 2009年1月1日以後に登録したPEFが同業企業課税特例の適用を受けようとする場合、その特例の適用を受けようとする課税年度の開始日以前(設立日から適用を受けようとする場合、設立日が属する課税年度の開始日から1ヶ月以内)に同業企業課税特例適用申請書を、納税地管轄税務署長に提出しなければなりません(租税特例制限法第100条の16第1項)。 つまり、2009年1月1日以後に登録したPEFの場合、同業企業課税特例を申請する場合、同業企業課税特例の適用を受けられますが、申請しない場合には一般内国法人と同一に法人税納税義務を負担しなければなりません。この場合、PEFが所得控除規定の適用が受けられず、PEF段階及び投資家段階において2重課税問題が生じえますが、PEFが一般的な内国法人と同様に取り扱われるため、その投資家であるGPとLPは、所得税法上のグロス・アップ(Gloss-up)制度及び法人税法上の収入配当金益金不算入制度を通じて、2重課税問題を解決することができます。しかし、現行税法の規定上、このような制度を通じても、完全な2重課税調整は行われません。 一方、一般の内国法人のように法人税納税義務を負担したものが、同業企業課税特例の適用を受けようとする場合には、課税年度の開始日以前に同業企業課税特例を申請すれば、この特例の適用が受けられます。 3. PEFと同業企業課税特例 PEFが同業企業課税特例を選択する場合、PEFには法人税納税義務がなく、その投資家(同業者)であるGPやLPのみが納税義務を負担します(租税特例制限法第100条の16第1項及び第2項)。GPとLPの納税義務は、従来から存在しており、同業企業課税特例の選択によって、PEFの納税義務のみがなくなるわけです。もちろん、従来にも、PEFが配当可能利益の100%を配当する場合、その金額だけ、所得控除が行われ、実質的に法人税を納付しなくてすみましたが、そのようにしても、法人税の申告義務は履行すべきであった反面、同業企業課税特例制度の下では、同業企業(PEF)は法人税納税義務がないので、このような申告義務も負担しないという点に、その違いがあります。 PEFの投資家たちは、法的な側面からはPEFから配当を受けて所得を得ることになりますが、税法上では同業者(GP及びLP)が配当を実際に受け取ったかに関係なく、同業企業の課税年度の終了日が属する課税年度の所得税、または法人税課税標準計算時にPEFが得た所得の中で、投資家に帰属されうる金額分だけ、投資家に実際に配当されたものとしてみなされ課税されることになります。つまり、PEFが譲渡所得、または配当所得などの所得が発生した場合、その所得を投資家に実際に配当したか如何を問わず、PEFの事業年度終了日現在、GPとLPには、これらを自分の所得として課税することになります。この場合、所得の源泉を判断するに当たって、GPはPEFの所得の源泉として判断されますが、LPはPEFの所得の源泉に関係なく、配当所得としてのみみなされることになります。つまり、GPの場合、PEFの源泉である譲渡所得、または、配当所得を自ら直接に受け取ったこととみなされて税法が適用されますが、受動的同業者であるLPの場合には、PEFの所得の源泉に関係なく、PEFから配当を受けられたこととみなされて課税されることになります。一方、GP及びLPにすでに配当されたこととみなされ、所得税、または法人税を課税された金額を財源としてPEFが配当する場合、その配当金額に対し、GP及びLPに追加的に課税は行われません。 4. 結論 以上のように、2009年以後には、PEFの課税制度がだいぶ変更されましたので、PEFの設立及び運用において、このような課税制度の変更による効果等を詳しく検討し、租税上の不利益がないように注意すべきであると思います。
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