法務法人(有限)地平

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【相続・家事・事業承継】遺留分に関する違憲提請及び憲法訴願事件

2024.05.07

<div style="text-align: justify;"><strong>【相続・家事・事業承継】遺留分に関する違憲提請<span style="font-size:14px;"><span style="color:#2980b9;"><sup>1)</sup></span></span>及び憲法訴願<span style="font-size:14px;"><span style="color:#2980b9;"><sup>2)</sup></span></span>事件<span style="font-size:14px;"><span style="color:#2980b9;"><sup>3)</sup></span></span></strong><br />
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憲法裁判所<span style="font-size:14px;"><span style="color:#2980b9;"><sup>4)</sup></span></span>は2024年4月25日、①被相続人の兄弟姉妹の遺留分について定めた民法第1112条第4号に対して「単純違憲決定」を下し、②遺留分喪失事由を別途定めていない民法第1112条第1号から第3号及び寄与分に関する民法第1008条の2を準用する規定を設けていない民法第1118条は、いずれも憲法に合致せず、2025年12月31日を期限として立法者が改正するまで引き続き適用されるという決定（「継続適用憲法不合致決定」）を宣告しました。<br />
<br />
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<strong><span style="color:#c0392b;">1. 兄弟姉妹の遺留分について定めた民法第1112条第4号 → 単純違憲（決定日から効力喪失）</span></strong><br />
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民法は法定相続主義と遺言自由主義の折衷案として、遺留分制度を設けています。「遺留分」とは、被相続人における財産処分の自由を制限し、法律上相続人等への帰属が保障された相続財産の一部の割合を意味します。現行の民法第1112条は遺留分の権利者及びその割合を次のように定めています。<br />
 </div>

<div style="background:#eeeeee;border:1px solid #cccccc;padding:25px">第1112条（遺留分の権利者及び遺留分）相続人の遺留分は、次の各号による。
<ol>
	<li style="text-align: justify;">被相続人の直系卑属は、その法定相続分の2分の1</li>
	<li style="text-align: justify;">被相続人の配偶者は、その法定相続分の2分の1</li>
	<li style="text-align: justify;">被相続人の直系尊属は、その法定相続分の3分の1</li>
	<li style="text-align: justify;"><u>被相続人の兄弟姉妹は、その法定相続分の3分の1</u></li>
</ol>
</div>

<div style="text-align: justify;"><br />
憲法裁判所は、このうち兄弟姉妹の遺留分を定めた民法第1112条第4号が、基本権制限の立法限界を逸脱し財産権を侵害するため、違憲であると判断しました。被相続人の兄弟姉妹は、相続財産の形成に対する寄与や相続財産に対する期待などがほとんど認められないにもかかわらず、遺留分権を付与することにはその妥当な理由が見い出せず、不合理であるということが主な理由として挙げられています。単純違憲の決定が下された民法第1112条第4号は、その決定時から効力を失います。<br />
<br />
参考までに、日本の遺留分制度においても兄弟姉妹の遺留分は認められておりません（日本民法第1042条第1項）。</div>

<div style="text-align: justify;"><br />
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<span style="color:#c0392b;"><strong>2.　遺留分喪失の事由を別途定めていない民法第1112条第1号～第3号 / 寄与分に関する民法第1008条の2を準用していない民法第1118条 →（継続適用）憲法不合致（法律の改正時まで効力維持、改正期限：2025年12月31日）</strong></span><br />
<br />
1) 憲法裁判所は、相続人を長期間遺棄したり精神的ㆍ身体的に虐待したりするなどの反道徳的な行為を行った相続人の遺留分を認めることは、一般国民の法感情と常識に反するため民法第1112条で遺留分喪失事由を別途定めていないのは不合理であると判断しました。<br />
<br />
2) 憲法裁判所は、民法第1118条は、寄与分に関する民法第1008条の2を遺留分に準用する規定を設けておらず、被相続人を長期間扶養したり相続財産の形成に寄与したりした寄与相続人がその見返りに被相続人から財産の一部を贈与されても、当該贈与財産は遺留分算定基礎財産に算入されるため、寄与相続人は非寄与相続人の遺留分返還請求に応じ上記贈与財産を返還しなければならないという不当かつ不合理な状況が発生するため、不合理であると判断しました。<br />
<br />
3) ただし、憲法裁判所は上記規定に対して違憲決定を宣告し、その効力を喪失させると法的混乱や空白が発生するおそれがあり、審判対象条項による遺留分制度自体が憲法に違反するということではなく、これを構成する遺留分条項の一部の内容が憲法に違反するという本決定の趣旨にも反するため2025年12月31日を期限として立法者が改正するまで継続適用する憲法不合致決定を下しました。すなわち、民法第1112条第1号から第3号、そして第1118条は2025年12月31日を期限として立法者が改正するまでその効力を維持することになります。<br />
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<span style="color:#c0392b;"><strong>3. 決定の意義</strong></span><br />
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本決定は、憲法裁判所が民法上の遺留分制度に関連して制度自体における立法目的の正当性及び遺留分制度を構成する各遺留分条項の合憲性まで総合的に検討、判断した初の決定です。遺留分制度は今日においても遺族の生存権を保護し、家族の緊密な連帯を維持するため必要であるという点において憲法的な正当性は引き続き認めながらも、一部の遺留分条項（遺留分喪失事由を定めていない民法第1112条第1号から第3号、兄弟姉妹の遺留分を定めた民法第1112条第4号、及び寄与分に関する民法第1008条の2を遺留分に準用する規定を設けていない民法第1118条）に対して違憲（憲法不合致）を宣言し、立法の改善を促したことにその意義があります。<br />
<br />
憲法不合致の決定により法律が改正されれば、遺留分訴訟においてはこれまで争点となっていなかった遺留分喪失事由、寄与分の考慮等の争点が追加され、さらに争いが激化することが予想されます。また、本決定は事業承継の場面など、韓国企業の支配構造にも影響を及ぼす決定であるため、今後の動向に注目する必要があります。<br />
 </div>

<div>
<div style="line-height: 110%;"><span style="font-size:16px;"><span style="color:#2980b9;">1)</span> 違憲提請（違憲法律審判提請）とは、裁判所に係属する訴訟事件において、当該事件に適用される法律の憲法違反が問題となり、裁判所が職権で、あるいは当事者の申立により、憲法裁判所に当該法律が憲法に反しているか否かの判断を求めることを指します（憲法第107条第1項、憲法裁判所法第41条、第43条）。</span></div>

<div style="line-height: 110%;"><span style="font-size:16px;"><span style="color:#2980b9;">2)</span> 憲法訴願とは、公権力の行使または不行使により、憲法上保障されている基本権を侵害された者が、憲法裁判所に対して基本権の救済を要求する制度です（憲法第111条第1項第5号、憲法裁判所法第68条第1項、第2項）。</span></div>

<div style="line-height: 110%;"><span style="font-size:16px;"><span style="color:#2980b9;">3)</span> 憲法裁判所は、2020年以降提起された違憲提請及び憲法訴願審判請求総47件を併合審理し、本事件の決定を下しました。</span></div>

<div style="line-height: 110%;"><span style="font-size:16px;"><span style="color:#2980b9;">4)</span> 日本では、最高裁判所が憲法による違憲審査権を付与され、憲法の最終的な有権解釈権を有します。一方、韓国には、憲法上の独立機関として憲法裁判所が存在し、違憲法律審判、弾劾審判、違憲政党の解散審判、権限争議及び憲法訴願審判の機能を持つなどして、憲法の解釈において最終的な権限を有します。</span></div>
</div>

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