過去、知的財産権(Intellectual Property Right)紛争の中心が、特許、実用新案、商標、デザインなどの産業財産権と著作権などにあったことに比べ、最近には営業機密や職務発明、不正競争防止など、いわゆる「新知的財産権紛争」が増加しています。 わが国においても、某携帯電話製造会社を相手として繰り広げられたいわゆる「チョンジイン(천지인)ハングル入力方式に関する職務発明補償金請求訴訟」以後、職務発明に対する関心が高まりました。職務発明とは、会社の役・職員が会社の業務範囲に属することを、職務と関連して行った発明の特許、実用新案の考案、デザインの創作のことを意味します。このような職務発明に対する権利を会社が持つのか(使用者主義)、でなければ、発明者である役・職員のものにするのか(発明者主義)に対し、各国は異なった基準を持っています。韓国はドイツ、日本のように、一旦は発明者が権利を取得する「発明者主義」をとっています。 その間、職務発明に関しては、特許法、実用新案法、デザイン保護法と発明振興法に分かれて規定されていました。ところが、2006年3月3日から発明振興法を改定し、発明振興法で一括して職務発明に対する規律を行うことになりました。改定発明振興法によると、会社の役・職員が職務発明を完成した場合、その事実を遅滞なく会社に文書で通知しなければならず、このような通知を受けた会社は通知された日から4ヶ月以内に、当該発明に対する権利を会社が譲受するか如何を発明者に通知しなければなりません。会社は、勤労契約や勤務規定などを通じて、予め役・職員の職務発明を自ら承継するという予約承継約定を役・職員と締結することができます。こにょうな予約承継約定がある場合とない場合に、職務発明に対する処理手続きと会社が有する権利が異なることになり、一般的には予約承継約定があるほうが会社にとっては有利になります。 いかなる場合においても、職務発明に対する権利を会社が持つことになると、発明者は会社に対して正当な補償を請求できる権利があります。どの程度の補償が正当な補償なのかに対する法律規定がなく、その間においては裁判所がその裁量で算出していました。しかし、改定発明振興法では、もし、会社が役・職員と職務発明の補償基準に対して十分な意見聴取や協議を通じて契約や勤務規定などに定めた内容があれば、そのような基準による補償は正当な補償であると認めています(発明振興法第15条第2項)。 このように、改定法において従来にはなかった新しい正当な職発明補償の基準が示されたことにより、これから会社が設けた補償基準が、労使間において十分な協議手続きを経て制定されたのかに関する職務発明補償関連の紛争が増加していくと予想されます。したがって、会社としては、もし、補償規定を設けたとしても、そのような補償規定の準備段階において役・職員と正しく協議をおこなったという点を立証できる証拠を整える必要があると考えられます。 職務発明補償金請求訴訟において、論点の中心は、正当な補償を算出するための基準というものをいかに考えるのかにあり、使用者が直接に職務発明を実施する場合の職務発明補償金算定の基礎として使用者の利益をいかにみるのかということが問題になります。使用者は職務発明に関する権利を承継しなくても、無償の通常実施権を有するとして解されるからです。日本では、すでに、これに対して裁判所がいくつかの判例を通じて一応の基準を整えましたが、わが国の裁判所においてもそれと類似した基準にもとづく判決を下しています。 一方、会社が職務発明に対する権利を承継しておいて、特許などの産業財産権として出願せず、営業機密として管理する場合においても、会社には補償すべき義務があります。営業機密は機密性をその要件とするため、いかなる技術を特許として開示する場合、開示された範囲ないにおいては営業機密として保護を受けられず、よって会社は職務発明された技術を特許として出願するのか営業機密として管理するのかという選択をしなければなりません。もし、営業機密として管理しようとする場合も、このように職務発明補償金請求権を認めることによって発明者の権益を保護しているのです。 このように、職務発明の管理及び補償と関連しては、会社と役・職員間の利害関係が衝突する部分と、会社の戦略的な判断が必要な部分が混在するため、会社としては総合的で体系的な管理体系を確立する必要があるといえるでしょう。 *法務法人地平志誠IP・ITチームは、Inews24に「地平志誠法律散策」という題目で、定期的に投稿しています。
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