2009年2月28日に改正された中華人民共和国保険法が、2009年10月1日から施行されました。保険法は、1995年に制定され、2002年の中国のWTO加入後の保険市場開放のために改正されてから、今年に再び改正されたものです。
今回の第2次改正過程において、従来の保険法に87条文を追加、19条文を削除し、126条文を修正するなど、従来の保険法を大幅に改正することによって従来から維持された条文は13ヶ所だけになりました。特に、今回の修正の際には、保険事件紛争の主な対象であったにもかかわらず、2002年の第1次改正の際に修正されなかった「保険契約」部分が全面的に改正されました。
1.保険法改正の趣旨及び主要な内容
1)保険契約者の利益保護
保険法改正の最も主な趣旨は、保険契約者などの消費者利益保護です。改正保険法においては、保険契約の締結(保険契約者の告知義務不履行による保険会社の保険契約解除権の要件及び消滅時効、保険約款の内容の制限など)、保険会社の免責(保険契約者の故意、または過失で限定された免責要件など)、訴訟時効(保険金支払い請求権の時効起算日など)等と関連する条項においては、保険契約者の利益を保護するための内容が反映されました。
2)保険会社に対する監督強化
改正保険法においては、保険会社及びその職員が保険業務を行いながら遵守すべき事項も具体化し、保険会社とその株主間の不法的な取引に関する監督措置を新たに追加するなど、保険会社に対する監督及び保険会社の不法行為に対する処罰も強化しました。
また、保険監督管理機構が支払能力の不足する保険会社を重点監督管理対象として指定し、資本金増加、再保険加入、業務範囲の制限、株主への配当制限、固定資産買い入れ規模の制限、資産運用方式及び比率の制限、理事と監事及び高級管理職の年収制限などの措置がとられるように規定し、そして、保険会社などの不法営業行為を調査するために、保険会社の業務を監督する保険監督管理機構に、保険会社及びその役職員などの銀行口座の懲戒、隠匿、または毀損可能な書類の封印措置などがとられる権原を与えました。
3)保険会社の資金運用対象の拡大
今回改正された保険法の中で注目すべきことは、保険会社の資金運用対象を、有価証券、証券投資基金(ファンド)以外にも、従来には禁止されていた不動産投資まで拡大した点です。これによって、相対的に安定的な収益を保障する商業用不動産が、長期投資を好んでいる保険会社の主な投資対象になりうると予想されるなど、業界においては、改正保険法の施行による中国不動産市場の活性化が最大の関心事として浮かび上がっています。国際不動産諮問機構が発表した最近の報告書は、中国保険会社の資金が不動産市場へ流入されると、保険会社は国有企業とともに、中国不動産市場の主要な投資機関として浮上するのであろうと予想しています。ただ、業界の一角からは、最小2,000億元(約35兆ウォン)規模の莫大な保険会社の資金が不動産市場へ流入されることになった場合、中国不動産市場の過熱化による副作用を心配する意見もあります。
2.関連措置
一方、保険監督管理委員会は、改正保険法の施行のために、2009年9月27日と28日に、「保険会社管理規定」、「保険会社仲介業務不法行為処罰方法」、「保険専門代行機関監督規定」、「保険仲介機関監督規定」、「保険公估機関監督規定」(公估機関とは、保険目的物、または、保険事故の評価、鑑定、損害評価計算などの業務を代行する機関です。)などを発表し、改正保険法施行に必要な細部規定を整備しました。また、最高人民法院は、2009年9月21日に、従来に発生した事件と改正保険法の適用問題を専門的に取り扱った司法解釈を発表しました。
3.展望
改正保険法の施行によって、保険契約者の権利がいっそう強化されると考えられます。また、保険会社の資金運用対象の拡大が、中国不動産市場及び金融市場の活性化に期待できるのかも今後注目すべきところであるでしょう。
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