キルギズスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、アゼルバイザンなどで構成されている中央アジア地域(CIS)は、広大な領土と豊富な資源などによる成長潜在力が非常に魅力的な投資地域としていわれてきました。このような理由から、資源開発と不動産開発を中心として、中央アジア地域に対する投資が持続的に行われてきました。2008年度の下半期に発生した国際的な金融危機のため、中央アジア地域に対する投資が相対的に減ったことは事実ですが、投資対象としての中央アジアの重要性は依然として維持されています。
このような理由から、中央アジア地域の各国における担保制度に関して調べてみますが、本稿ではまず、その第1として、キルギズスタンのそれに関して検討します。
1. 抵当権
キルギズスタンの関係法令によって、土地所有権は抵当権の対象になりえます。抵当権を設定するためには、抵当権設定契約を公証しなければならず、公証を得た抵当権設定契約は、登記機関に義務的に登記されなければなりません。そして、抵当権の効力は、登記したときから発生します。
抵当権の法的な性質は、わが国のそれと類似しています。登記機関に抵当権を登記する場合、それ以後に設定される他の抵当権や一般債権より優先権が与えられます。担保物の売却を通じて取得した代金が被担保債務の償還に足りない場合、抵当権者には借主の他の一般財産から不足分を受領する権利が認められます。そして、貸出元本、利息、損害賠償金などが全額償還されると同時に、貸主は登記機関に貸し出し約定上の借主の義務がすべて履行されたという事実を書面通知し、抵当権を解除しなければなりません。
抵当権設定契約の当事者は、抵当権設定契約を締結した時から30日以内に、これを登記機関(Управление по землеустройству и регистрации прав на недвижимое имущество)に提出しなければなりません。そして、抵当権設定契約とともに、添付書類として、土地所有権に対する国家証書、記述台帳(Технический паспорт)、抵当権者と抵当権設定者の会社基礎書類(定款、設立契約書など)、政府手数料納付領収証などを提出することになります。
一方、抵当権の私的実行に対してさまざまな制約を設けているロシアの抵当権法とは異なって、キルギズスタンの抵当権法は、抵当権者と抵当権設定者間において抵当権の私的実行に関する契約が締結され、このような契約が登記機関に登記された場合、抵当権の私的実行ができるように制度を設けています。
2. 預金質権
キルギズスタンの関係法令上、預金口座に預かった預金に対して質権を設定することも許容されます。預金口座に対する担保権設定のために、公証や管轄官庁に対する登記は必要ではないのですが、すくなくとも、質権設定契約を書面で作成する必要はあります。また、関係法令上、必ず必要な手続きではないのですが、質権設定契約を担保権登録事務所(Местная залоговая регистпационная контора)に登録することが望ましいです。
質権設定契約には、少なくとも、(1)契約当事者及びその住所、(2)被担保債務の根拠契約、(3)担保物の目録、価値、構成及び位置、(4)担保権設定者の所有権を証明できる文書の目録や担保物に関する権利、(5)被担保債務の金額及び期限に関する事項などが含まれなければなりません。そして、口座開設銀行に対しては、担保権が設定されたという事実を通知し、口座開設銀行から担保設定事実に対する書面確認書を提供してもらう必要があります。このような手続きを経た場合、質権設定者は当該の預金口座に対する自由な預金入出金が遮断され、担保権者の同意がある場合に限って預金を引き出すことができるようになります。
質権も、抵当権と同様に、質権設定契約に私的実行に関する事項を含める場合、担保対象預金に対する私的実行が可能になります。
3. 持分質権
会社の持分に対して質権を設定することも、キルギズスタンの関係法令上、許容されます。預金質権と同様、持分質権も質権設定のために、公証や管轄官庁に対する登記が必要ではないのですが、すくなくとも、担保契約を書面で作成する必要があります。また、持分質権設定契約を担保権登録事務所(Местна Местная залоговая регистпационная контора)に登録することが望ましいということも預金質権と同様です。ただし、預金質権と異なって、持分質権の場合、質権設定事実をキルギズスタン法務部に報告しなければなりません。
4. 連帯保証
必ず、書面で締結しなければならないということを除き、連帯保証と関連しては特別な制限はありません。ただし、株式会社である場合、特殊関係者のための連帯保証が許容されないということには注意する必要があります。
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