写真 : 法務法人 地平志誠 具相洙(グ・サンス)公認会計士 2011年から、上場法人と韓国採択国際会計基準(以下、K-IFRS)を選択する企業は、K-IFRSを適用して財務諸表を作成しなければならなくなる一方、2010年から韓国国内の法人は、法人税を申告・納付する際に、連結納税方式を適用することが可能になります。このように、会計処理及び法人税の申告・納付と関連する制度は、大きな転換期を迎えていますが、上記のようなまったく新たな制度の導入によってK-IFRSと税法間の乖離、立法上の不十分さ、税法解釈上の問題などのため、納税者に混乱が生じる可能性もありえます。
したがって、本稿ではK-IFRSの導入によって税法に生じうる変化を体系的に検討し、納税者にとってK-IFRSの導入による変化を予め調べ準備する際に役立てればと思います。
K-IFRSによると、支配企業は、従属企業投資を連結した連結財務諸表を作成しなければならなくなります。ここでいう支配力とは、経済活動において効益を得るための財務政策と営業政策を決定できる能力を意味しますが、支配企業が、直接、または、従属企業を通じて間接的に、企業議決権の過半数を所有する場合には、支配企業がその企業を支配しているとみなされます。したがって、一般的に、従属会社の持分を50%以上保有する支配会社は連結財務諸表を作成しなければなりません。
ところで、税法上では、韓国国内法人が他の国内法人を100%支配する場合に限り、連結納税方式を適用することが可能です。このような連結納税方式を採択する場合、連結親法人は、各連結事業年度の終了日が属する日の末日から4ヶ月以内に、連結所得金額調整明細書、連結貸借対照表、連結損益計算書などを添付し、連結事業年度の所得に対する課税標準と税額を納税地管轄の税務署長に申告しなければなりません。ここで問題は、K-IFRSによる連結財務諸表作成のための連結範囲と法人税法上の連結納税方式を適用する時の連結範囲が異なるという点です。このような違いによって、K-IFRSによる連結財務諸表を作成する連結親法人が連結納税方式の適用を受けようとする場合、税法目的上、100%子会社のみで構成する連結貸借対照表と連結損益計算書を作成しなおさなければなりません。特に、このような税法目的上の連結貸借対照表と連結損益計算書が企業会計基準を準用しない場合、連結貸借対照表と連結損益計算書を添付して申告を行っても、これは適法な申告としてみなされません。
この点を考えると、連結親法人が連結納税制度の適用を受けるために作成した連結貸借対照表と連結損益計算書に対して、改めて外部の監査を受けるべきかということが問題になりえます。もちろん、外部監査を受けなくても、企業会計基準を準用して財務諸表を作成する場合には、特に問題にはならないと思われます。しかし、企業会計基準を準用しなかった場合、無申告になるというリスクがあり、このようなことを避けるために税務目的で監査を受ける場合、追加費用が発生するとの問題があります。
K-IFRSによると、財務諸表は期末財務状態表、期間包括損益計算書、期間資本変動表、期間キャッシュフロー表で構成されます。一方、法人税法による課税標準及び税額深刻の際に添付対象となる書類は、貸借対照表、損益計算書、利益剰余金処分計算書、そして、キャッシュフロー表で構成されます。したがって、K-IFRSを適用して財務諸表を作成する場合、利益剰余金処分計算書を作成すべきかということが問題になりえます。
利益剰余金処分計算書は、商法で規定している財務諸表の一部であり、K-IFRSにおいても「商法などで利益剰余金処分計算書の作成を要求する場合には、財務状態表の利益剰余金に対する補充情報として利益剰余金処分計算を注釈で公示する」と規定しています。したがって、K-IFRSが導入されても、現実的には、利益剰余金処分計算書は注釈に含まれる形で作成され維持される可能性が高いと考えられます。
よって、法人税法内にK-IFRSを適用する会社の場合、法人税法による課税標準及び税額申告時、利益剰余金処分計算書を添付しなくてもよいとの例外規定を設置する必要があると思われます。
2009年に韓国採択国際会計基準を早期に導入した企業は10社ほどでしたが、2010年には、約20社の会社が早期の導入を準備している模様です。2009年に、韓国採択国際会計基準を早期に導入した企業は、早ければ、2010年3月末まで法人税課税標準及び税額を管轄税務署に申告しなければなりませんが、税額を計算するための基礎財務諸表をどのような形式にすればいいのかに対し、課税官庁の明確な意見表明がなく、混乱を招いていました。
最近に至って、企画財政部法人税制課の有権解釈を通じて、「韓国採択国際会計基準の早期導入企業は、2009年12月31日に、属する事業年度の帰属分法人税課税標準の計算及び申告時、既存の企業会計基準(K-GAAP)によって作成した財務諸表を基準として、法人税課税標準と税額を計算して申告し、申告書にも同財務諸表を添付しなければならず、この場合、K-GAAPによって作成した財務諸表に対して、株式会社の外部監査に関する法律による外部監査及び商法による株主総会の承認を得なかった場合にも、同財務諸表がK-GAAPによって適切に作成された以上、これを使用することができる」との解釈が打ち出されました。
企画財政部の立場からは、当初、2009年に、韓国採択国際会計基準に合わせて法人税法を改正する方針でありましたが、非上場企業に対する会計基準がまだ発表されていない状況であったため、上場企業のみに適用される韓国採択国際会計基準を基準として法人税法を改正することに難しい面があり、法人税法改正が延期されることによって上記のような有権解釈はやむを得ない結果だったのでしょう。
しかし、2009年に、勧告採択国際会計基準を早期に導入した企業の立場からは、税金を払うために既存のK-GAAPによって財務諸表を作成しなおすか修正しなければならないため、帳簿作成に対する負担が大きく増加すると予想されます。特に、外部監査や株式総会の承認を得なかったとしても、K-GAAPに従ったのかに対する議論は継続的に発生すると思われ、これと関連するリスクと負担は納税者に転化されるとの問題もあります。そして、財務諸表の作成だけではく、法人税法の改正が行われる前までは、韓国採択国際会計基準による帳簿とK-GAAPによる帳簿を2重で作成・管理しなければならないため、これらと関連する費用も増加すると考えられます。
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