(写真: 法務法人地平志誠 李幸揆(イ・ヘンギュ)弁護士) 最近、韓国取引所(KRX)に上場されている外国企業と関連し、起きている問題は深刻さを増しているように見えます。2007年から始まった外国企業の韓国取引所への上場は、その後、雪崩を打ち、現在19社(有価証券市場5社、コスダック市場14社)が上場されており、今も多くの企業が上場を進めています。しかし、中国高繊控股公司の事態が収まる前に、日本企業のネプロアイティによる申込証拠金の不正出金事件が発生しました。さらに、コーウェル・イー・ホールディングスは自ら、上場を廃止するために公開買付を進めています。このような状況に手をこまねけば、韓国資本市場のグローバル化の1つの柱を成している外国企業の韓国上場は絶たれ、資本市場法の改正を通して、先進の投資銀行を育成するという政策目標も褪せてしまう可能性があります。このため、外国企業の韓国上場を充実したものとするために、制度を強化すると同時に、これまで問題視されてきた規制を果敢に改革していくことも考えなければなりません。
そこで、私はこれまでアメリカ、ラオス、中国、日本、オーストラリアなど様々な国の外資系企業の韓国取引所への上場業務を進めてきた経験から、いくつか提案したいと思います。
第一に、金融監督当局と韓国取引所も認識しているように、上場対象企業の実査をより徹底に行う必要があります。主管会社は勿論、法務法人による実査も、より徹底して行うべきであります。特に、外国企業としては、その国の法制度や慣行に対する理解が欠かせないため、主管会社などの法務法人への依存度が大変高くなっています。しかし、現在、外国企業の韓国上場において、コストの増加を懸念し、発行会社に法律諮問を提供している法律事務所だけを選任し、実査を行い、引受を担当する主管会社の法律諮問会社は特に選任していません。このような慣行を制度的に改善する必要があります。ニューヨークや香港の取引所などへの上場は、発行会社及び引受人のために、それぞれローカル及びインターナショナル法律諮問会社を選定し、互いに緊張感を保ちながら、検証を行う仕組みとなっています。我々もそのようなきちんとした業務慣行を導入する時期にきています。
第二に、韓国取引所と韓国預託決済院間の緊密な業務協力が求められます。外国企業の韓国上場過程において、もっとも頭を悩ませている問題の1つが、原株を上場するか、またはKDRを上場するかでありますが、最近、問題となった外国企業は主にKDRを発行していましたので、外国企業の場合、原株で上場するか、またはKDRで上場するかが、再び争点になっているようです。 結論として、多くの市場参加者が共感しているように、それは原則的に発行会社の選択に委ねるべき問題であると思います。特に、韓国取引所への2次上場はKDRの発行が必須であり、外国企業が位置する国で、将来2次上場を計画している企業は、韓国取引所に当然KDRで上場させなければなりません。設立地の国にDRで上場させる事例は無く、韓国の資本市場法もそれを許容していません。現在、韓国取引所に原株を上場している企業はケイマンや香港のように、比較的会社法制と定款の変更が自律的にできる国に持ち株会社を設立している中国企業が殆どで、日本は勿論、オーストラリアやアメリカもKDRの発行が制度的に避けられないということを考慮しなければなりません。このような議論と一緒に、現在、実務的な様々な問題を韓国取引所と韓国預託決済院が共に議論できる制度的枠組みを構築する必要があると思います。
第三に、海外で成功した在外韓国人の企業、または韓国企業の海外子会社を積極的に誘致する必要があります。外国企業による韓国上場が持つ実質的な意味合いは、韓国の投資家がより簡単に外国企業に投資し、外国企業の発展とそれによる果実を享受できるようにするところにあります。そこで、海外で成功を収めた在外韓国人の企業を積極的に誘致することは勿論、海外に進出している韓国企業の子会社を韓国に上場させることも、制度の面でサポートする必要があります。特に、韓国の親会社の売上や利益を超えている子会社を中国に置いている韓国の上場企業の多くが、中国の子会社を韓国取引所に上場させるために必要な上場規定の改正も積極的に考慮しなければなりません。上海証券取引所に開設される国際ボードや香港・シンガポールの取引所に、韓国の優良企業が中国に持つ子会社を、全て奪われることがあってはいけません。韓国企業が困難を乗り越えて成した海外進出の成果と果実を、韓国国内の投資家と享受できる措置を迅速に講ずる必要があります。このような制度強化により、韓国取引所のグローバル化は勿論、韓国証券会社の国際的な業務能力や収益性も向上できると思われます。短期的には純粋な外国企業の韓国取引所への上場が難しいということから、在外韓国人の企業や韓国国内企業の海外子会社の韓国取引所への上場を積極的に誘致する必要があります。 最後に監督当局と市場参加者及びアドバイザリー・グループが長い目でみていく必要があります。ここ3~4年間、外国企業の韓国上場のために、監督当局を始め、韓国のほぼ全ての証券会社と法務法人、会計法人が尽力し、多くの成果を挙げました。しかし、周知のとおり、多くの問題が現れており、これを解決するために、全ての関係者が智恵をしぼる必要がありますが、外資系企業の上場の流れが一気に盛り上がった分、すぐに冷めてしまうのではないかと懸念されます。大事の中の小事無しというのもありますが、角を矯めて牛を殺す愚を犯すことがあってはいけません。韓国の資本市場もグローバル化しないと、未来の希望を見出すことはできません。資本市場のグローバル化は先進の投資銀行を育成していく上でも欠かせません。このため、外国企業の韓国取引所への上場のために、より長い目で持続的な投資と支援を行っていく必要があります。
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